本総合戦略のコンセプトである ~世界のめがねの聖地SABAEの確立~ の“めがね”とは、眼鏡産業だけを指すものではなく、繊維や漆器、農業などの「ものづくり」はもとより、これらの産業を支えてきた女性の活躍や歴史、伝統、文化、自然、環境、市民性など鯖江市固有の地域資源の全てを象徴するものです。「めがねのまちさばえ」の知名度が大きく向上した今、さらに、世界が認める「めがねの聖地SABAE」を目指して、これらの資源に磨きをかけ、世界に向けて魅力を発信し続けることで、多様なステークホルダーⅰが集まり、経済、社会、環境の好循環が生まれる持続可能なまちの確立を目指 すものです。
鯖江市は、眼鏡フレームの国内生産シェア約9割を占める眼鏡産業、繊維王国福井の中枢を担ってきた繊維産業、約1500年の伝統と業務用漆器の全国生産シェア約8割を誇る漆器産業の三大地場産業を核とした「ものづくり」に特化したまちです。
また、眼鏡産業の分業制により育まれた「お互い様の心」など人情の厚い市民性やオープンイノベーションⅱ、産業を支える女性の活躍、高い品質とデザイン、機能性を追及する気質は、眼鏡産業のみならず、繊維や漆器にも共通する鯖江市の「ものづくり」産業を支えている、誇りのある伝統・文化であり、特に女性の活躍は、近年、国内だけでなく国連をはじめ国外からも高い注目を集めており、今後の展開が期待されています。
この絶好の機会に、「ものづくり」産業をはじめとする本市ならではの魅力ある地域資源を世界に向けて発信するとともに、世界から認められる持続可能な地域モデルの確立を目指して挑戦し続けます。
先導的、横断的な取組みとして、「持続可能な開発目標(SDGs)の推進」、「世界への挑戦と創造」、「みんな輝く市民活躍のまち」、「育てやすい暮らしやすいまち」、「ふるさと愛」の5つを重点施策として設定し、今後5年間に取り組む方向性を示します。
持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年(平成27年)9月の国連総会で採択された国際社会が2030年までに目標達成を目指すための行動計画で、貧困・福祉・ジェンダー・環境・教育・インフラなどに関わる17の目標が掲げられています。日本においては2016年(平成28年)5月にSDGs推進本部が設置され、本市においてもこれに賛同し2017年(平成29年)5月には研究チームを発足し2018年(平成30年)5月には推進本部を設置しています。2019年(令和元年)には内閣府から「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」の選定を受け、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を軸としてSDGs達成に向け取り組んでいます。SDGsは、全ての関係者の役割を重視し、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指して、経済・社会・環境を巡る広範な課題に統合的に取り組むもので、持続可能なまちづくりや地域活性化に向けて取組みを推進するに当たって、SDGsの理念に沿って進めることにより、政策全体の最適化、地域課題解決の加速化という相乗効果が期待でき、地方創生の取組の一層の充実・深化につなげることができます。
鯖江市は、眼鏡・繊維・漆器といった三大地場産業を持つものづくりのまちであり、古くから下請け分業体制であるため、家族経営が多く、女性も経営を担う一員としての役割を担っていたことから、女性の就業率や共働き率も高く、女性が働きやすく社会参画しやすい風土が育まれてきました。今後、持続可能なまちづくりを進める上で、全てのステークホルダーのエンパワーメントが重要であることはいうまでもありません。そこで、女性が輝き、活躍し続けられるよう「居場所」と「出番」づくりを創出し、女性のエンパワーメントを生み出すことで、子どもや男性、地域のエンパワーメントにつなげていきます。
鯖江市は、県内の市町の中で2番目に面積が小さく、人口密度が最も高いまちであることから、行政効率が高く、医療、福祉、商業等の生活機能も整っています。一方で、更なる高齢化の進展や北陸新幹線の敦賀延伸など新たな課題への対応が求められていることから、公共交通の利便性向上や道路や水道等の公共インフラの長寿命化、防災・減災機能の強化を図るとともに、快適に暮らせるよう、「ゼロカーボンシティ宣言」をはじめとする脱炭素社会実現への取組みを深化しつつ、環境にやさしく景観に配慮した施策を推進するなど、全ての人が住みやすく安心して暮らせるまちづくりに取り組んでいきます。
Society 5.0の実現
厳しい財政状況や人手不足の中、市民サービスの水準を保ち、魅力的なまちづくりを進めるためには、従来の手法だけでは限界があります。既存の業務をAIやロボットなど新たな技術を活用してオンライン化・デジタル化・自動化することにより最大限に効率化させ、市の業務効率化や市民サービスの向上に取り組んでいきます。
特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、現在行っているすべての行政サービスについて、市民等からの申請・手続きのオンライン化をはじめ、審査や交付などの一連の業務を自動化することを目指していきます。
※ 本戦略の各主要な事業において、Society 5.0に関する事業には【Society5.0】を、今後、Society 5.0に関する事業となることを目指していく事業には【Society5.0 化】を表示してあります。
眼鏡産業においては、長年培われたチタンの微細加工技術を活かした医療機器の開発など、成長分野への進出が進んでおり、越前漆器においては、最先端技術を用いた漆の造形物の製作や海外でも受け入れられる新たなデザインの研究など、海外への販路拡大や産地巡礼型観光による[インバウンド](#インバウンド]消費の取り込みに向けた取組みを進めています。今後も、新たな市場開拓や需要の拡大を図るとともに、地場産業の更なる知名度向上を目指し、若者に魅力のある雇用の創出に取り組んでいきます。
鯖江市最大の観光地であり、市民の憩いの場である西山公園は、市民に愛される魅力溢れる場所であり、生活に潤いをもたらす緑の空間です。この西山公園を核として、地域に住んでいる方や鯖江市を訪れた方誰もが楽しく、快適に歩くことができるような、自然・歴史・伝統・文化等の地域資源を最大限に活かした、魅力的なまちづくりを推進していきます。
市民主役の推進
早くから「市民主役条例」を策定し、市民と協働のまちづくりを目指してきた鯖江市にとって、「市民主役」は他の自治体に誇れる財産です。これからも、市民一人ひとりがふるさと鯖江に愛着や誇りを持ち、自ら進んでまちづくりに参加するような、市民主役、全員参加の活気あるまちづくりに努めます。また、この「市民力」がさらに高まるよう、すべての市民がいきいきと活躍できる居場所づくりを推進し、より一層みんなが輝き、元気でエネルギーあふれるまちづくりの推進に努めていきます。
鯖江市では、地区ごとの子育て支援ネットワークなど、子育てがしやすい環境づくりのために地区ぐるみで協力し合いながら、地域ぐるみの子育て支援や情報提供・相談を実施してきました。今後も、子どもを安心して産み育てることのできるように、家族はもとより社会全体で育み、皆が子育てを支えあえる地域となるよう取組みを進めることによって、すべての人々にとってやさしく暮らしやすいまちづくりの推進に努めていきます。
鯖江市では、いち早く、資金不足に悩む民間の中小・零細企業等に対しクラウドファンディングという資金調達の場を行政により提供することで、若手企業家等の新たなる挑戦を応援してきました。現在、民間による資金調達の場が整い、行政として一定の役割を果たしたことから、今後、これら民間サービスの活用などにより若者の夢を応援するとともに、若者の柔軟で創造性豊かな提案を市政に反映することを通じて、さばえファンの獲得や若者が活動しやすいまちづくりに努めていきます。
子どもたちは、地域のかけがえのない宝です。子どもたちがものづくり体験等を通して、ふるさと鯖江の伝統ある地場産業や、先人から受け継いだ歴史・文化をより身近に感じ、ふるさとへの愛着と誇りを持ち、そして豊かな人間性・社会性を持てるような取組みを進めていきます。
本総合戦略の対象期間は、国の総合戦略と同様に、2020年度(令和2年度)から2024年度(令和6年度)の5年間とします。
「鯖江市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定および推進に当たり、市民、産業界、大学、金融機関、労働団体、言論界、士業等のいわゆる「産官学金労言士」の有識者の意見を反映するため設置した「鯖江市総合戦略推進会議」において、本総合戦略に掲げた各施策の実施状況の検証を行うとともに、必要に応じて本総合戦略の充実・見直しを行います。
鯖江市は、眼鏡・繊維・漆器の三大地場産業を中心とした、まち全体が一つの工場ともいえる「ものづくり」のまちとして発展してきました。近年は、鯖江市最大の武器であるこれら地場産業の蓄積した高度な技術を最大限に活用して、他の成長分野に進出するなど、販路拡大に取り組んでいるほか、農商工連携による新たな商品の開発や農業の6次産業化、[IT](#ITInformation Technology)企業を中心とするサテライトオフィスの積極的な誘致など、地域産業の活性化に取り組んでいます。こうした取組みをさらに加速させるとともに、鯖江市の「ものづくり」を支えてきた女性の活躍にも焦点を当て、産業の更なる活性化とイメージアップを図り、若者や女性にとって魅力ある雇用の場を創出します。
KPI(成果指標) | 単位 | 現状値 | 目標値 |
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成長分野における従業者数 | 人 | 235(2018年) | 330(2024年) |
鯖江市は、学生を中心とした若者や女性を市政の「パートナー」と位置づけ、若者や女性の柔軟で豊かな発想や創造力を市政に活かす学生連携ⅰ事業に先んじて取り組んでおり、近年では、こうした取組みに参加した学生や若者が鯖江市に定住して地場産業に携わるようになるなど、成果が現れつつあります。芽生え始めたこの流れを確かなものにするために、鯖江市の最大の武器である「ものづくり」の魅力と可能性に惹かれて移住・定住した若者達のチャレンジを全力で応援していきます。また、鯖江市で産まれ育った子どもたちがふるさとに愛着と誇りを感じることができる教育を推進するとともに、全ての市民が主体的にまちづくりに参加できる「市民主役」「市民協働」の取組みをさらに加速させ、「市民力」がさらに高まるよう、すべての市民がいきいきと活躍できる居場所づくりを推進し、「住みたくなる・住み続けたくなるまちづくり」に正面から取り組みます。さらに、本市の取組みに関心を持つ企業や大学等から連携事業が提案されるなど、関係人口の増加が認められることから、シティプロモーションを強化するなど関係人口の獲得にも取り組み、将来的に定住人口の増加につなげていきます。
KPI(成果指標) | 単位 | 現状値 | 目標値 |
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若者の社会減の抑制 | 人 | △52(2018年) | 30(2024年) |
前述のとおり、鯖江市は近年まで人口増加傾向にあり、かつ国と比較して合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に産む子どもの数)が高い水準にあるものの、人口規模が長期的に維持できる水準(いわゆる「人口置換水準」。現在は2.07)には届いておらず、将来的には人口、特に若い女性の数が減少する見込みであり、今後の人口減少をいかにして食い止めるかが喫緊の課題です。そのため、将来の人口減少に歯止めをかけるため、子育て家庭の経済的な負担や不安感を軽減し、安心して子どもを産み育てることのできる、子育てにやさしい環境づくりに取り組みます。また、学校教育や文化・芸術との触れ合いを通じて心身ともにバランスのとれた健全な子どもの育成を図るとともに、高齢者も障がい者も生涯健康で生きがいを持っていきいきと暮らすことができ、全ての市民にとってやさしく暮らしやすいまちを推進することで、笑顔があふれるまちの創造を目指します。
KPI(成果指標) | 単位 | 現状値 | 目標値 |
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出生数 | 人 | 582(2015~18年の平均) | 620(2020〜24年の平均) |
「魅力的な雇用の創出」、「若者が住みたくなるまちの創造」、「若くて元気なまちの創造」の好循環を生み出すためには、市民にとって暮らしやすく、住み続けたいと思える魅力的な居住空間・生活環境が欠かせません。市民の利便性向上や職員の業務負担軽減などを図るための行政手続きのデジタル化をはじめとするDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による利便性の向上を図るとともに、伝統的な「ものづくり」産業や豊かな自然、文化等を活用した賑わいのある、活気あるまちづくり、機能的で利便性が高く、また子どもから高齢者まで全ての市民が安全、安心して生活ができるまちづくりを進めます。また、市民や事業者、行政が協動でふるさと鯖江の自然環境や公共空間の管理を一体的に推進することで住みやすい、良好な生活環境を整えます。
KPI(成果指標) | 単位 | 現状値 | 目標値 |
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快適に暮らせると感じる人の割合 | % | 75.9(2018年) | 80(2024年) |
本総合戦略のコンセプトである ~世界のめがねの聖地SABAEの確立~ に向けて各施策を推進するために、行政課題に適切に対応できる組織への改革を進め、職員の意識改革や政策能力の向上を図るなど、組織の強化を図っていきます。
また、透明で公正な行政運営や効率的・効果的な行財政運営に努めるとともに、近隣市町との行政事務の共同実施や国・県との連携・役割分担を進めます。
エンパワーメントとは、社会や組織の一人ひとりが、抑圧されることなく力をつけることで、自分を取り巻く環境に影響を与えるようになること。
ゼロカーボンシティ宣言とは、2050年までに二酸化炭素などの温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、森林等の吸収源による除去量との均衡を達成する排出実質ゼロを目指す取組みを表明すること。
Society 5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会のこと。
AI(Artificial Intelligence)とは、人工知能のことで、人間にしかできなかったような高度に知的な作業や判断をコンピュータを中心とする人工的なシステムにより行えるようにしたもののこと。
オンライン化とは、インターネットなどのネットワーク経由で処理できるような状態にすること。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AI(人工知能)やセンサー等ICT技術の活用、各種デジタルデータの連携により、人々の生活をより良いものへと変革するもの
チタンとは、軽くてさびにくいと言った特性を持つ素材のこと。鯖江市ではチタンをいち早くメガネに活用したため、扱いが難しいとされているチタンを、様々な方法で精密に加工する技術を持っています。
成長分野とは、一般的には「環境・エネルギー」「健康・医療」「航空・宇宙」分野などを指し、鯖江市においては、特に医療やウェアラブル端末(眼鏡型端末など身につけて持ち歩くことができる情報端末)関連等への進出を目指しています。
インバウンドとは、旅行業界で海外から来日した外国人旅行客のことを指すものであり、インバウンド消費は、訪日外国人観光客による日本国内での消費のことを指します。
市民主役については、自分たちのまちは自分たちがつくるという市民主役のまちづくりを進めることを目的として、2010 年(平成 22 年)4 月 1 日に、市民による市民のための「市民主役条例」が施行され、この市民主役条例の推進に向け、同年 7 月 7 日に設置された「鯖江市民主役条例推進委員会」と市が協定を締結し、市民主役の具現化に取り組んでいます。
クラウドファンディングとは、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うこと。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語。
農商工連携とは、農林水産業者と商工業者がそれぞれの有する技術やノウハウなどの経営資源を互いに持ち寄り、新商品・新サービスの開発や販路の拡大等に取り組むこと。
6次産業化とは、第一次産業である農林水産業が、農林水産物の生産だけにとどまらず、それを原材料とした加工食品の製造・販売や観光農園のような地域資源を生かしたサービスなど、第二次産業や第三次産業にまで踏み込み、これらを一体的な産業と捉えて、新たな付加価値を生み出すこと。
IT(Information Technology)とは、インターネット等の通信とコンピュータとを駆使する情報技術のこと。IT企業は、一般的にはITを活用したサービス等を提供する企業のことを指します。
サテライトオフィスとは、企業本社から離れた所に設置された遠隔勤務をできるよう通信設備を整えたオフィスのこと。
イノベーションとは、モノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすこと。
ウェアラブル端末とは、腕時計型端末や眼鏡型端末等の身につけて持ち歩くことができる情報端末のこと。
関係人口とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のこと。
シティプロモーションとは、広義には国内外に向け、自治体が主体となって行う定住促進・観光誘客・企業誘致・産業振興などの幅広い取り組みを指す言葉のこと。本市では、平成 29 年度にガイドラインを策定し本市の魅力を国内外にPRに取り組んでいます。
重要業績評価指標 KPI(Key Performance Indicator)とは、目標の達成度合いを計る定量的な指標のこと。